苦境はチャンス――ホテルハマツの総支配人が語るホテル業界で働くやりがいと課題

レッド

written by ダシマス編集部

ハマツ観光株式会社が運営する「ホテルハマツ」。宿泊施設にとどまらず、レストランなどの飲食、宴会場や結婚式場などさまざまな事業を営んでいます。

ホテルハマツは2020年に発生した新型コロナウィルス(以下:コロナ)の影響により、今までにない危機に直面しました。お客さまが来てくれるかどうか以上に、働き手が必要な状況の中、総支配人である道下和幸(みちした かずゆき)さんは、「今だからこそ、この数年間できなかったことを形にして、古いけど新しいホテルハマツの姿を地元の人に見せたい」と語ります。

道下さんの考える、ホテルハマツの新しい未来、そしてそんな未来を一緒に担っていってほしい人材とは。現状の課題感も含め、話していただきました。

総支配人 道下 和幸(みちした かずゆき)さん

総支配人 道下 和幸(みちした かずゆき)さん

1960年東京生まれ。大学を卒業後、大手ホテル運営会社に入社。最初に横浜市のホテルに配属され、東京都内や東海地方、仙台市で長年ホテル運営に携わり、2011年1月、ハマツ観光に入社。40年にわたる経験を現在勤めているスタッフへ日々継承している。楽しみは首都圏で暮らす孫たちとの食事。

執筆:山本 麻友香

執筆:山本 麻友香

元ハウスメーカー勤務の実績やブログ執筆経験を活かし、フリーランスライターとして活動中。2017年生まれの1人息子がいる母でもある。好きなことは、スポーツをすること、見ること、食べること、寝ること。

ホテル業界で約40年。道下総支配人が考えるホテルの仕事の特徴とは

 

――総支配人は約40年ホテル業界にいらっしゃるとのことですが、振り返ってみていかがでしょうか。

あっという間に40年が経ったと感じています。役割や立場、勤務する場所などいろいろな仕事に関わることが数多くありました。私が勤めてきたホテルは宿泊施設だけではなく、レストラン、宴会場、結婚式場など、さまざまな機能の集合体だったので、仕事内容が変わるとまるで転職しているかのように感じましたね。

勤めるホテル自体が変わることもあったのですが、それぞれの勤務先で感じた大きな違いは、その土地の食文化や生活習慣、周りを取り巻く企業との関係です。その中でも、地元の方との関係性には温かみを感じましたし、励みにもなっていました。

地元の方やホテルの近所の方たちは、他の地域からくる人をとても歓迎してくれるんです。ホテルの支配人は2、3年ごとくらいで代わっていくので、次の人はどんな人だろうと楽しみにしてくれているのを感じましたし、仲良くやろうね、楽しくやろうねなどと声を掛けてもらって、とても嬉しかったことを覚えています。

 

――地域によって、接客の仕方など違いはあるのでしょうか。

接客や取引上のセオリーは、基本的にはどこの地域でも変わらず、理にかなったやり方を覚えることが必要です。

ただ、それぞれの地域の名産品や特産品などは、「地域色を出しすぎだ」と感じるくらいアピールした方が良いこともあります。地元の人から見れば、日常に溶け込んでいて珍しくなく、良いものだとアピールする対象になっていないようなものでも、私のように県外からきた人間からしたら魅力的に感じるものは多い。そういうものを見つけると、伝えたくてしょうがないという気持ちになるので、どんどんアピールするようにしていました。

分かりやすいインパクトを与えるためにも、地元のものは活かしていくべきです。驚きを与えることができれば、自分が働いているホテルを覚えてもらえるので、積極的に地元の良さをPRしていく必要があると考えています。

 

ハマツ観光が直面している苦境。それはチャンスでもある

 

――貴社の特徴や、事業について教えてください。

ホテルとしては90室の客室をもって宿泊営業を行い、レストラン営業として洋食、和食、中国料理、バーの4店舗を直接経営。最大約2,000名収容可能な大宴会場を持ち、宴会や結婚式に関連する施設を運営しながら営業をしています。あとはそれに関わる会社や事業を運営していくために必要な部門がありますね。

営業事業は宿泊とレストランと宴会場の3本柱で、分かりやすく言うと宿泊施設、レストラン、宴会場という3つの大きな工場を持っている運営会社みたいなイメージです。

 

――総合ホテル業を運営してきた中で、特に苦労したことは何でしょうか。

コロナによる影響でホテルが全館休業になったときに、多数の従業員が退職してしまったことですね。13年前の東日本大震災のときにも退職した人はいましたが、そのとき以上です。

従業員の多くが退職し、新しい人材が入ってこない間は、単純に人手を失っただけではなく人を育てるという場面も少なくなってしまいました。ホテルを運営、営業するうえで、人材が失われることのダメージを痛感しましたね。

今もまだ、日本料理と中国料理のレストラン・バーは休業中です。お店を休んでいる時間が長ければ長いほど、レストランの従業員には不安が生じているかと思います。

ですがそんな中でも、再開できる方法を探したり、宴会場で提供する料理の新しい良い食材を探そうとしたりと、少しでも役に立って活躍できる場を探しながら頑張ってくれています。

 

 

――コロナによる影響で未だに苦しんでいる企業は少なくありません。貴社はこの状況をどう打破していこうと考えていますか。

今は危機であると同時に、これまでにない新しい良さや私たちが目指すホテルのあり方を、お客さまに示していけるチャンスの時期だとも捉えています。

例えば、ホテル主催のイベントを催して、ホテルハマツが活気あるホテルになったということをお客さまにお伝えする機会を作る。また、こうしたイベントなどをすることで、従業員同士の結束も固められるようにしていきたいと考えています。

コロナが流行る前の2019年までは、エンターテインメントや食を楽しめる企画や催しを常に開催していましたが、この数年間はできていなかったので、イベントを実施できるようになったことを形にして、お客さまへお見せしていきたいですね。

 

――ホテル業界全体においても言える課題かと思いますが、人材不足についてはどのように対応していくと良いと感じますか。

外国人の方や仕事をリタイアされた年配の方たちに、働いてもらえる機会を積極的につくっていくべきだと個人的には思っています。

特に地方都市では働き手の絶対数が少ないため、この業界で働きたい人はさらに絞り込まれます。だからこそ裾野を広げて、ホテル業界で働く魅力や働くうえでの注意点などをいろいろな方面で発信し、働き先を探している人へのメッセージとして伝えていく必要があると感じています。

 

ホテル業界、ひいてはホテルハマツで働く心得とは

 

――道下さんの考えるホテルの仕事の魅力、やりがいは何でしょうか。

やはりお客さまに褒められたり、ありがとうと言われたりすると嬉しいですね。やりがいに関しては今のホテルハマツならではですが、昔ながらの良さを活かしつつ、新しいことに挑戦するタイミングにあるということです。これまで積み上げてきた歩みや経験を活かしながら、新しいホテルハマツのあり方と融合させて進んでいく必要があります。こうしたタイミングだからこそ、感じられるやりがいはあるかと思います。

 

――具体的に、ホテルハマツが求めているのはどのような人でしょうか。

年齢、性別、経験問わず、社会人としてのマナーや礼儀、常識がきちんと分かっている方は誰でも歓迎です。あえて言うなら、ホテルやレストラン経験者にこだわらず、苦境や挫折を経験してきた社会経験の豊かな方に興味を持っていただけると嬉しいですね

ホテルやレストラン、結婚式場などで働いた経験のある方であれば、戦力として期待度が高いのはもちろんですが、社会人としていろんな経験をしてきた人の方が応用力があると思うので。その経験をホテルハマツのこれからにぜひ活かしてほしいと思っています。

 

――求職者にとって、働くうえでやりがいや働きやすさも大事ですが、待遇や報酬も気になるところです。

不況の中ではありましたが、去年も今年も賃上げはできましたし賞与も支給できました。ホテルを運営する上で欠かせない業務の、宿泊、レストラン、宴会場。この3本柱のひとつを任せられる人と、そして人材をきちんと育てられる人には、良い待遇で良い仕事をしてもらうのは当然だと考えています。

 

――最後に、これから面接にこられる方に向けて伝えたいことを聞かせてください。

面接の場というのは、私たちにとっても面接にきた方にとっても最初の大きな入り口です。そこで、お互いの考えがわずかにでもズレたまま働き始めてしまうと、なかなか修正がきかなかったり、行き違いが起きたりして良いパフォーマンスが発揮できなくなってしまいます。

例えば、「レストランで接客サービスをする仕事」と表現されている仕事に対してどんな働き方をイメージして面接にくるのか。出来上がった料理を、ただ客席へ運ぶという仕事と、出来上がった料理の材料、特徴、セールスポイントを理解し、お客さまとのコミュニケーションができる状態で料理を届けるという仕事では全く違いますよね。

こうした認識の違いがないように、面接にこられる方にはホテルの今の状況を理解し、働く上での難しさや楽しさを自分なりに想定したうえできてほしいです。お互いの行き違いをなくす。面接はそんな場にしたいと思っています。

 

 

ハマツ観光株式会社について

HP:https://www.hotel-hamatsu.co.jp/

採用情報:https://www.hotel-hamatsu.co.jp/about/recruit

 

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