【ダシマス老舗・福島縣商工信用組合】地元福島を、より魅力ある県に。世界への眼差しと対面での対話で生む、融資を超えた支援

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written by ダシマス編集部

創業30年以上の老舗企業に焦点を当てる本企画。持続的な成長と成功をおさめ、時代をまたぎ社会に貢献してきた歴史を紐解き、その長い期間によって培われた文化や知見から、多くの人に気づきとインスピレーションを与えることを目指しています。

本記事では、2024年で創業70年となる福島縣商工信用組合で理事長を務められている須佐 真子(すさ まこ)さんにご登場いただきます。

元々は異業種でのキャリアを進むつもりだったという須佐さん。大きな転機を経て、地域住民や企業の経済発展へと志を移し、福島縣商工信用組合へ入職。海外の要素を学び導入する、面と向かってのコミュニケーションを重んじるなど、新たな視点を取り入れながら、顧客にも職員にも心地よい組織形成に奮闘されています。

福島縣商工信用組合、そして須佐さんの根幹に据えられた揺るがない軸とは。最後には、未来を担う若者への優しいメッセージも残してくださいました。

福島縣商工信用組合 理事長 須佐 真子(すさ まこ)さん

福島縣商工信用組合 理事長 須佐 真子(すさ まこ)さん

福島県出身、38歳。10年昭和大卒、東北大病院入局、11年6月ハーバード大フォーサイス研究室入局、12年8月修了、14年4月福島県商工信組IT顧問、19年3月東北大大学院単位取得退学、同年6月福島県商工信組理事総務部長、20年7月常務。

執筆:神田佳恵

執筆:神田佳恵

フリーランスライター。"何気ない人生にスポットライトを当てる"をテーマに、インタビュー・広報note・SNS・コピーなどの分野にて執筆活動中。コミュニティ運営や編集、マーケターとしても活動の幅を広げる。一児の母。夫と息子、note、推し、旅が好き。

顧客の事業発展に心から寄り添い尽力するのが、金融機関のあるべき姿

 

――貴組合の創業の経緯をお聞かせください。

私の祖父が弊組合の前身となる郡山商工信用組合を創立したのは、1954年になります。地域の住民や企業に寄り添う庶民金融機関の立ち上げを目的に、郡山市に事務所を開設しました。当時の社員数は7名、戦後間もないころでしたので、郡山を中心に福島県の経済発展のために力を尽くしたと聞いています。

その3年後の1957年に、現在の福島縣商工信用組合に名前を変え、以降は県内中部の中通り地域を営業区域として事業を展開しています。

 

――銀行と信用組合には、どのような違いがあるのでしょうか。

どちらも金融機関ではありますが、主にお取引させていただくお客様が異なります。信用組合では個人や中小企業がお客様となりますが、銀行では地域を超えた大企業など、取引範囲が広くなります。信用金庫は、金融支援を通した地域の経済発展を念頭に置いているため、地域密着型の側面が強いんです。

近年は大手銀行を中心に、国全体が投資推進の傾向にありますが、信用組合としては地域の個人や中小企業への支援を行い、その成長をサポートするのが重要事項だと考えています。

 

――ここ数年はコロナ禍で各企業も苦しい局面が多かったかと思います。貴組合のお取引先にも余波はありましたでしょうか。

弊組合のお取引様も例外ではなく、新型コロナによる売り上げ減少に直面されたお客様には、実質無利子・無担保でご利用できるゼロゼロ融資もご利用いただきました。現在は融資額のご返済も本格的に始まっており、引き続き事業を継続されている方もいらっしゃいますが、残念ながら廃業されてしまう方も少なくありません。

 

――大変な困難の中でも、国や金融機関の支援により生き残ることのできた企業もあったのですね。

そうですね。もし起業を考えている方がいたら、密に金融機関と連携をとっていただければきっと安心して事業を継続できるのではないかと思います。起業には資金が必要ですし、信頼できる金融機関に頼っていただければ、継続的な集客や収益維持収益維持のためのコンサルサポートまで受けられます。

これはコロナ禍に限ったことではなく、また大手銀行などでもいえることではありますが、「融資をして終わり」ではなく、お客様の事業発展を考えて力を尽くすことが、我々のあるべき姿だと思っています。

 

異業種・海外経験があるからこそできる、理想的な店舗体験づくり

――須佐さんご自身が理事長に就任されるまでの背景も、ぜひ教えてください。

実は元々、金融とは異なる歯科医師として働いていたんです。東京の歯科大学を卒業後、研究医として経験を積み、いつか歯科医院を開業してそのまま医療の道に進むんだろうなと思っていました。

転機となったのは、2011年の東日本大震災。仙台で被災した私は、その後福島県に戻りました。当時は私の父が理事長を務めており、幼い子どものいる社員は全員避難させ、最後まで地元に残って地域の皆様を支え続けている姿を見て、心が動いたんです。

もちろん、歯科医師としても人の力になることはできますが、医療は治療したらそこで支援は終わります。でも金融分野は、その方とのかかわりを通して、その先のご家族や社員の方など、多くの人生にかかわることができることに気づいたんです。

金融の道に進む決意をしてから1年間、アメリカに渡って知見を深め、その後2013年に入職。2019年から役員として従事しています。

 

――アメリカで得た知見をどのように貴組合に取り入れたのか、具体的にうかがってもよろしいでしょうか。

お客様にとってわかりやすいものでいえば、店舗のつくりです。一般的な銀行や信用組合は、カウンター越しに職員と対面するスタイルが主流だと思いますが、弊組合のとある店舗ではカウンターを取り払っているんです。これは、アメリカの金融機関で実際に見た店舗内設計から着想を得ています。

私たちの仕事は、お客様の状況やお困りごとを丁寧にお聞きして、適切な解決方法をご提案する相談業務。窓口に座ってお客様をただお待ちしているのでは、心理的距離も堅苦しさも感じられます。お客様に安心して相談していただけるように、カウンターレスを導入してリラックスできる環境を整えています。

 

――海外の視点を金融機関に取り入れるというのは、あまり聞いたことがありませんでした。

近年になって少し増えてきたような印象があります。大手銀行では、弊組合と同じようにカウンターレスを導入している企業も出てきているそうですよ。

アメリカやヨーロッパの金融業界は最先端ですし、他の国からもつねに学びを得ています。直近では韓国で開催された信用組合のリーダーズプログラムに参加し、各国のリーダーたちと情報交換をしたり、信用組合をどのように発展させていくか議論をしたり、多くの学びがありました。9月にはネパールにも渡る予定で、各国で出会った気づきやアイデアは意欲的に取り入れていきたいと考えています。

私だけでなく、社内で優秀な成績を上げた職員を10名ほどともなって、金融視察旅行と銘打ってニューヨークへ渡ることも。外から学ぶという姿勢を、組織全体でも定着させられるよう取り組んでいます。

 

面と向かって声を聞くことから実現した、さまざまな制度改革

――お仕事をするなかで、大切にしていることはありますか。

会社全体に浸透している価値観ではありますが、「Face to Faceの営業スタイル」を心掛けています。お電話やオンラインよりも、お客様と顔を合わせて直接お話を伺うことを大切にしているんです。支店の職員だけでなく、私自身もお客様先にはできる限り足を運ぶようにしていて、昨日もちょうど訪問をしてきたんですよ。

また、お客様に対してだけでなく、職員に対しても直接対面して率直な声を聞く機会を設けるようにしています。現在200名の職員がいますが、年に一度は必ずその全員と一対一で面談を実施。日々の業務についてや、将来どんな人生を描いていきたいかまで、広く聞いています。

職員と活発に意見交換し、挑戦的な姿勢で積極的にアイデアを取り入れるためにも、この機会は大切にしているんです。面談の成果もあってか、自発的に声を上げてもらえるような職場づくりができていると感じています。

 

――200名全員と面談されているのですか……!面談を通して、職員の皆様からはどのような意見が出ましたか。

去年は全員との面談を終えるまで2ヶ月近くかかりました(笑)。全員面談は、私が総務部長を務めていた3年前から行うようにしているんです。

面談を通して、それまでの人事配置や仕組みを見直した点もあります。それまで営業や外回りの業務は主に男性が担い、女性は支店内で事務サポートの業務を担当していましたが、男女ともにそれぞれが異なる業務に挑戦したいと考えていたことがわかったんです。

それからは、それぞれの希望をできる限り叶えられるよう、配置転換も柔軟に行なっています。

 

――直接職員の声を聞いているからこそ、その希望に寄り添うことができるのですね。他にはどのような制度のアップデートに取り組まれていますか。

人事評価制度の改善も行なっています。それまでの評価基準は、業績などの数字が主体で限定的でした。でも既存の評価制度では、直接数字を上げていない事務方職員の頑張りは正しく評価されていない状況があって。そこで、事務業務での成果や休暇の取得率など、業績以外の評価項目を設けるようにしたんです。

業績を上げるには、お客様と直接対面している営業担当者の努力はもちろん、その裏で事務を行なっている内勤職員のサポートも不可欠です。金融機関をはじめ、歴史の長い企業では昔ながらの社内制度が守られている現状もありますが、異業種や海外で培った知見を活かしてよりよい組織を形作れるように奮闘しています。

改革や改善には、少なからず反対の声も上がります。職員200名の意識を変えるのは簡単なことではありませんが、一人ひとりと面談をしている分、全員の顔が頭に浮かぶんです。誰の想いも置いてけぼりにしないように最善を考え、挑戦を重ねる日々ですね。

 

外から学び、地元に貢献。さまざまな角度から福島県の活性化を目指す

――2024年で70周年という節目を迎える貴組合ですが、今後取り組んでいきたいことを教えてください。

「地域密着」という姿勢は変えずに、今後は組合単体ではなく自治体や他の金融機関とも連携して、さまざまな取り組みに挑戦していきたいと考えています。現在、福島県には弊組合以外にも3つの信用組合があるので、ともに地域活性化に向けた新たな取り組みができたら理想ですね。

現状では、4組合共通で発行しているクレジットカードの売り上げの一部を、障害者施設に寄付したり、お客様からお預かりした利息の一部を子どもたちの教育施設へ寄付したり。地域の皆様に寄与できるよう、より連携を強めて活動を広げていきたいです。

 

――貴組合単体や、須佐さんご自身としての目標もぜひ教えてください。

これまでと志は変わらず、弊組合含めて持続可能な福島県企業を増やして、より魅力のある県に成長していけるように努めていきたいです。そして県内から、日本に限らず世界を舞台に活躍できる人材を多数輩出できるように貢献したいですね。

 

――世界の未来を担う若者や本記事の読者へ向けて、何かアドバイスをするなら、どんな言葉を贈りますか。

とにかくいろいろなことに挑戦して、貪欲に学び続けてほしいと思います。世の中には金融以外にもさまざまな業種、職種がありますので、視野を広く持ってさまざまなことを吸収することで、自身の可能性もぐんと広がっていくはず。

私自身、異業種を経験したり、海外で知見を深める経験を通して、現在の仕事に取り入れられるヒントをたくさん得ることができました。実際に海の向こうの世界を自分の目で見てみるのも、今後のキャリアに役立つかもしれません。

もし働く場所として福島縣商工信用組合を選んでくださったら、一般的な信用組合以上に海外に触れる機会は多いかもしれません。地元のために働き、地元で活躍することに希望を抱いてくれる方がいたら、ぜひとも弊組合でご一緒できたら嬉しく思います。

 

福島縣商工信用組合について

・ホームページ:https://www.fukushimakenshin.co.jp/

 

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