「多能工職人を増やして業界を盛り上げたい」建設業が嫌いだった若手社長が、防水工事の会社を経営する理由
written by ダシマス編集部
2020年創業、平均年齢30歳前後というフレッシュな企業・株式会社明新。「どんな建物も守ります」を合言葉に、各種防水工事や外壁塗装、外構工事、さらにはビル・マンションの改修工事まで、幅広い施工を行っています。若手メンバーが多いこともあり、職場にはいつも賑やかな会話と笑顔が溢れています。
今回お話を伺ったのは、明新の代表取締役 笹原 春雄(ささはら はるお)さん。若手職人の育成や、業界のイメージアップに日々注力している笹原さんですが、若いころは建設業が大嫌いだったと語ります。そんな笹原さんが建設業を盛り上げようと、考えを変えた転機となった出会いとは?防水工の将来性や若手層におすすめしたい理由、仕事をするうえで大切にしていることなど、たっぷり語っていただきました。
株式会社明新 笹原 春雄(ささはら はるお)さん
1983年中国ハルピン生まれ。祖母が日中戦争で中国に残された残留孤児だったた10歳で山形県上山市に引き上げる。20代後半で建設業の師匠と出会い、人生が一変。当初は嫌っていた建設業に生き甲斐を見出す。2015年に防水工事を中心とした施工店を開業、2020年に法人化。現在は日本多能工協会の理事として新たな職人の発掘と育成に尽力。人との出会いで人生が変わると確信し、若い職人たちの成長を支援している。
執筆:神田佳恵
フリーランスライター。"何気ない人生にスポットライトを当てる"をテーマに、インタビュー・エッセイ・コラム・コピーなどの分野にて執筆活動中。一児の母。夫と息子、note、推し、旅が好き。(取材:大久保 崇)
防水工事を中心とした、幅広い施工対応が強み。民間・公共ともに実績多数の信頼
――初めに、貴社の特徴や事業内容をお伺いしてよろしいでしょうか。
弊社は、山形県に拠点を構え、防水工事・塗装工事、ビルやマンションの改修工事を手がけています。メイン事業が防水工事で、山形県内で同様の事業を中心に展開している企業は数少ないので、主軸事業自体が弊社の特徴と言えるかもしれません。
さらに弊社は、対応できる防水の種類が幅広いのも強みですね。広範囲にウレタン樹脂を塗装して行うウレタン防水から、専用の材料を使用して外壁などに施すシーリング加工など、10種類の防水工事に対応できます。
――他社では対応できないような難しい施工もカバーされている、ということでしょうか。
おっしゃる通りです。例を挙げるとすると、シート状の防水剤を専用のアスファルト剤で貼り付けて施工を行うアスファルト防水。日本では1905年代から使われている古い施工法で、施工実績も豊富なため、未だ多くの需要があります。しかし、高齢化や工数の複雑さも手伝って職人の数がどんどん減ってきているんです。
新築マイホームを、信頼できる防水施工で守りたいと願う方も少なくありません。そんなお客様の期待に応えられるのは、弊社の大きな強みだと思います。
――担い手が減少している中で、貴社のように幅広い施工に対応できる会社があるとお客様もとても心強いのではないかと思います。
施工の対応範囲を広げた背景としては、とにかく食いっぱぐれないように、という切実な想いがあったのが正直なところなんですよ。
ご存知の通り、山形県をはじめ東北一帯は積雪量も多いので作業ができず、冬の季節は仕事自体がなくなってしまうんです。冬季は関東へ出稼ぎに行くケースもありますが、もし地元で仕事を増やしていくならば全般的な施工に対応できる方がいい。お客様のためでもあり、自分たち自身のためにも、対応範囲はつねに拡大していきたいと思っています。
――過去の施工実績についても、お話しできる範囲でどのような工事に取り組まれてきたのか教えてください。
民間工事が大多数にはなりますが、病院や大学の建設工事など、年に2〜3件のペースで公共事業にも取り組んでいます。資格の取得や納税関係の遅延有無など、公共工事を受注できる業者にはいくつかのハードルが課せられますが、弊社は問題なく対応できています。
大嫌いだった建設業で生きる決意をくれた出会いと、「明新」に込めた想い
――創業に至るまでの、笹原さんのご経歴についてもお聞きしたいです。
実家が裕福ではなかったので、中卒ですぐ社会に出て働くようになりました。調理師見習いや工場勤務、建設業では基礎型枠大工などいろいろ経験しましたね。結婚し、家族を養っていかなければならなくなったので、最終的には建設業で身を固める決意をしました。
本音を言うと、当初はものすごく建設業が嫌いだったんですよ……。「3K」という言葉もある通り、「きつい・汚い・危険」なイメージがありましたし、実際過去にアルバイトで入った現場はものすごくきつかった。昔は殴る蹴るが当たり前なスパルタ環境で、夢も希望も感じられなくて。
――過去に建設業で辛い経験をされていたんですね。今は明新を創業されて前向きに活躍されていると思うのですが、どのような転機があったのでしょうか。
以前ダシマスでも記事が公開されていた、ゆうき総業の結城社長との出会いがきっかけになりましたね。
小学・中学が同じ先輩ではあって、幼いころはよく一緒に遊んでいた仲でした。しばらく会っていなかったのですが、私が震災復興作業で宮城県に出張していたときに偶然再会し、社長が主催する山形の塗装ボランティアに誘われて参加しました。それ以降、社長から現場仕事を発注していただくようになったんです。
ボランティア中にお互いの近況について語り合ったのですが、会っていないうちに会社を作って、いい組織を束ねて活躍している社長の姿に胸が熱くなりましたね。悪いイメージしか持てなかった建設業にも、社員を大切にして教育し、人に投資して成長している企業があったのかと。あの方との再会をきっかけに、建設業に希望を持てるようになりました。
――その後どのように明新の立ち上げに至るのでしょうか。
再会した2013年からしばらく個人事業主として、そのままいくつかの現場作業をゆうき総業から請け負っていましたが、2020年に独立しました。法人化にはずっと憧れを抱いていたので、自分の名刺に「株式会社」という言葉が印刷されているのを見た瞬間は、本当に感慨深いものがありました
――ちなみに、「明新」という社名にはどのような想いが込められているのでしょうか。
文字通り、「明るく新しい」という意味を込めました。まだまだネガティブなイメージが強いのが、建設業の現実です。でも私の会社で働いてくれる従業員は、明るい未来を描いていてほしい、そんな想いで名付けました。
とにかく仲のいい職場!寄り添いながら育成し早期独り立ちを目指す
――どのようなメンバーが働いているのか、働く環境についておうかがいしたいです。
私が42歳で1番年上なのですが、他のメンバーは全員20〜30代の若者が集った組織です。国家資格である防水施工の資格取得状況は人それぞれですが、経験や知識を積み重ねながら少しずつ取得してもらっています。
――社内の雰囲気についても、ぜひ教えてください。
小規模な会社ですが、社員はみんな仲がいいですよ。一つひとつの現場をこなして、それぞれの仕事や役割を果たしながらレベルアップしています。
遠方へ出張の仕事をする場合は、全員同じ部屋で寝泊まりをするんですよ。まさに同じ屋根の下で同じ釜の飯を食うといいますか。もう本当に仲がいいので、修学旅行の夜のように全員でわいわい騒いで……うるせぇなぁと思いながらも、そんな空気が好きなんですよね(笑)。
建設業というと、人が定着しないイメージを持っている方もいるかもしれませんが、明新は昨年から1人も退職者が出ていません。肌感覚ですが、業界全体でコンプラ遵守への意識も高まっているように感じています。
――あたたかな空気感が伝わってきます。職人育成と聞くと「見て学ぶ」のイメージも強いですが、社員教育はどのように行われていますか。
一人ひとりに寄り添いながら、丁寧に教えるようにしています。一昔前は「一丁前になるのに10年はかかる」とも言われていましたが、向き合い方によっては3年くらいで済むこともあると、個人的には思っているんです。
我慢が美徳とされる考え方もありますが、それで人が離れてしまってはもったいない。あたたかい態度で各社員に適した教育を進め、早期に独り立ちできるのを目指しています。
――社員の皆様に、仕事のうえで大切にするように伝えていることなどは何かありますか。
2つあって、1つ目は「即レス・即答・即行動」です。私自身が心掛けていることでもあるのですが、お客様や取引先からの質問を現場担当者に確認する際、私が仲介することでスムーズになることはあっても、時間的ロスは発生させないようにしています。小さいことのようですが、この努力を積み重ねていると次第に認めていただけるようになるんですよ。「明新っていつも連絡が早いな」と思っていただけたらこちらの勝ちです(笑)!
2つ目は、難しい現場でどうすればいいか迷いが出たとき、「自分の家だと思って建てなさい」と指導しています。若いころに大工をしていたころに親方からいただいた言葉の受け売りなのですが、ずっと私の心に残っていて。この言葉を聞けば、どうすればいいか自然と迷いがなくなるんですよ。
若者は特に活躍のチャンス!多能工を目指して業界を盛り上げる仲間を募集中
――防水工という職種について、あまり知見のない方も多いのではないかと思います。仕事の魅力や、どのようなキャリアステップが見込まれるか、ぜひ教えてください。
先ほどもお話したとおり、高齢化によって職人人口は年々減り続けているのが現状です。しかしそれは、若いうちから始めれば競合も少ないし、長期的に活躍できることにもつながるんです。
さらに言うと、最近は防水施工だけではなく、周辺工事の塗装・左官までできる「多能工」を目指すよう社員には働きかけています。一人でより多くの工事に対応できるようになれば、仕事のオファーの範囲は格段に広がりますから。
――近年は、多くの職種でマルチスキルな人材の価値が高まっていますが、建設業でも同様の動きがあるのですね。
おっしゃる通りです。実は昨年、ゆうき総業や他3社とともに、一般社団法人「日本多能工協会」を立ち上げました。建設業の既存イメージであるネガティブな3Kに対し、私たちが掲げる3Kは「向上・拡散・継承」と、未来を見据えています。
今活躍している70代前後のベテラン職人も、きっとこの先長期的に前線で活躍し続けるのは難しい。反対に今から若い方が今スタートすれば、早いうちから活躍するチャンスはたくさんあります。
個人的に、将来的には職人が言い値で仕事を取れるような世界にしていきたいと思っているんです。今以上に職人にとって働きやすい環境を作っていきたいと思っていますので、ぜひ若い方にも挑戦していただきたいと思っています。
――業界全体でも、どんどん希望的な未来に向かって進んでいるのだなと感じます。会社の展望については、どのように感じていらっしゃいますか。
明新としては、もっと多くの職人を育てていきたいですね。若い方をたくさん採用して、積極的に人的投資も行い、今以上に雇用を生み出していきたいと思っています。そのために、弊社もたくさん仕事を生み出していけるように鋭意努力の日々です!
――最後に、この記事を読んでくださった方に、熱いメッセージをお願いいたします!
これからの建設業は、「向上・拡散・継承」という、シンプルかつポジティブなイメージに日々生まれ変わっています。防水工も若い方にとっては可能性だらけの職種だと思いますし、弊社としてもより活躍の場を広げていただくために多能工に向けた投資を惜しみなく行っていきたいと思っています。
私たちが生活するうえで必要不可欠な道路や信号、住宅も、すべて建設業の従事者が造り上げているものです。今後も建設業はなくなることのない業種だと思っています。やる気さえあれば、未経験でも大丈夫!夏場・冬場は体力的に厳しい現場もありますが、一緒に楽しく働きたいと思っていますので、ぜひ私たちの仲間になっていただけたらと思います!
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