【ダシマス老舗・パティズ】「お客様が納得する店」を考え続けて35年。社長の店舗づくりへのこだわり

レッド

written by ダシマス編集部

創業30年以上の老舗企業に焦点を当てる本企画。持続的な成長と成功をおさめ、時代をまたぎ社会に貢献してきた歴史を紐解き、その長い期間によって培われた文化や知見から、多くの人に気づきとインスピレーションを与えることを目指しています。

今回、取材するのは全国にファンシーショップPATTY'Sを展開する株式会社パティズ代表取締役の齋藤啓一(さいとう けいいち)さん。齋藤さんは未経験からファンシーショップを立ち上げ、2023年に35周年を迎えました。

東日本大震災やコロナを乗り越えて店舗数は100店舗を超え、全国で愛される店づくりを続けていらっしゃいます。そんな齋藤さんに、この35年の変遷からお客様が納得するような店づくりへのこだわりなどを伺いました。

代表取締役 齋藤啓一(さいとう けいいち)さん

代表取締役 齋藤啓一(さいとう けいいち)さん

1954年、福島県南会津郡只見町生まれ。神奈川県の高校を卒業後、電力会社に入社。「お店をやってみたい!」の気持ちから、雑貨小売業へ転身する。現在はコンサル会社の社長も兼務し、業界の活性化を目指す。

執筆:井崎 まゆ

執筆:井崎 まゆ

フリーライター。文系大学院を卒業後、アニメ系専門学校で声優を育てる仕事を経験。人材系ベンチャー企業に転職し人材紹介業と派遣事業に携わり、主に個人営業・法人営業・採用を経験。現在はフリーランスとしてライター、キャリアコーチなどに取り組む。国家資格キャリアコンサルタント。キャリアコンサルタント技能士2級取得。

はじまりは会津若松の1店舗からーー大震災とコロナを超えて迎えた35周年

 

ーーまず、パティズ創業の経緯について教えてください。

平成になる直前、会津若松でファンシーショップの1号店をオープンしたのが始まりです。ファンシーショップを始めた理由は、集客が見込める商品を扱い、そのうえで自分が楽しく仕事ができそうと思ったからです。当時から、ショッピングセンター内にもいろんな店が出店していたのですが、なかでもお客さまの入りが良かったのが本屋とファンシーショップでした。

私はもともと電力会社に勤めていたので、ファンシーショップの経営は素人ですし、会津若松にきたのも電力会社の転勤がきっかけで訪れた土地なので土地勘もありません。会津若松という土地柄、車で移動しても時間がかかるなど交通面での利便性も決していいわけでなく、最初はあまりうまくいかなかったですね。

特に冬は厳しかったです。冬になると、1号店が面している通りをお客さまが歩くことはほとんどありません。当然、売り上げは激減し、特に厳しかったのを今でも覚えています。そんな全くの素人で何もわからずに始めたのですが、店作りに必要な感性は持ち合わせていたようで、なんとかうまくやってこれたのかなと思っています。

しばらくして、私たちもショッピングセンター内に出店することが決まりました。それからは少しずつ店舗数を増やし、今年(取材:2023年11月)に入って116店舗になりました。

 

ーー今に至るまで、ターニングポイントとなったのはどんなことでしょうか。

ある問屋が持ってきた「ピエロの絵の入ったレターセット」を取り扱ったときですね。それまで仕入れていた商品とは毛色の違うグッズでしたが、置いている商品の売れ行きがいいわけではなかったので、騙されたと思って何種類か置いてみました。すると、レターセットを置いてからどう知ったのかわかりませんが、地元の高校生たちが何セットも買っていってくれるようになって。その出来事が私の考え方を変えるきっかけになりましたね。

それまでは正しいと考えていたことだけでなく、まだまだ必要なノウハウがあると気がつきました。それからはどういった情報が必要かがわかってきて、やり方を変えていくと売れるようになり次第に自信がついていったんです。

 

ーー厳しいことも多かったと話されていましたが、危機的状況に直面したとき、どのように乗り越えてきたのでしょうか。

大きな危機的状況といえば、東日本大震災とコロナです。そういったときこそ、一旦冷静になることが大事だと思っています。一つひとつの問題点を洗い出し、優先順位の高いものから解決するように取り組んできました。

あと大切なのが、ピンチの時こそ正直に行動することですね。たとえば経営が赤字になったとしても、不都合なことは隠さず素直に向き合うことです。店舗運営は、銀行や入居している大手スーパーとの関係も大事ですので、正直でいることで関係各所と長期的な信頼関係が得られると考えています。

店の経営に関して言えば、他にも苦労した出来事はたくさんありました。でも、私自身はそれほど苦労したと、思ったことはないかもしれないです。振り返ってみるといいことの連続だったと思っており、今もその気持は変わっていません。

 

「お客様が納得するような店」をつくるーー社長の中にある営業マンと職人とは

 

ーーパティズのビジョンについて教えてください。

ビジョンは3つです。「わが社は販売を通じて地域に貢献します」「わが社は知識を深め、発想を広め、創意工夫を実践します」「わが社は個人の発想を尊重し、活力ある企業文化を創造します」。これは創業当初から変わっていません。

 

ーー35年で100店舗以上の規模に拡大されていますが、社長が仕事において大切にしている価値観は何でしょうか。

「商売は心理学」。イトーヨーカドー創業者の伊藤雅俊さんの考え方を参考にしているのですが、これに尽きると思います。店舗の見せ方やレイアウト、接客態度などの良い要素を積み上げ、100点満点に近づけるようなお店を作る。そうすれば、お客さまが納得できるような完璧な店ができる、という考え方です。

私たちは商品も、店作りも、ベストを尽くすために日々努力しています。ネットでどんな物も手に入る世の中で、お客さまが何を考え何を求めているのか、時流に合わせた心理状況を掴むことが大切ですね。

 

ーー激動の時代の中で事業を継続させるために、どのように対応してきましたか。

まず重要なのは情報収集です。次にどのような商品が流行するかを見極め、店舗作りも日々進化させる必要があります。どんなライバルよりも「お客さまが納得できる店作り」にこだわりたいので、そのための情報が必要なんですね。

情報獲得で大事なのは同業の流れを把握することです。私は株式会社ジャパンクリエーションという会社の社長を兼務しておりまして、そこで小売業のコンサルティングを行なっています。ネット上での情報収集もしていますが、さまざまな小売店のオーナーさんに電話して、常に何が売れるか電話で情報収集することが多いですね。そういった面もパティズの事業に活かされていると思います。

もう一つ、事業継続のために必要なのはバランス感覚です。常日頃、私は「自分の半分はトップの営業マンで半分は職人」でいることが大事だと言っています。営業マンのような交渉力と、職人らしい店作りへの感性や商品の目利き。どちらかに偏ると、ワンマン経営になってしまったり現場のことがわからなくなったりするので、非常にバランスが重要だと考えています。

 

戻ってきたくなる企業――社長が語る「好きな商品に囲まれて働く」魅力とは

 

ーー従業員の方とのコミュニケーションで心がけていることはありますか。

自然体で臨んでるので意識していることは特にないですね(笑)。よく店舗に行く機会を設けていますが、パートの方にも気軽に声をかけて、仕事の話よりは世間話をします。全国に店舗があるのでなかなか行けない店もありますが、視察はいろいろな店舗をまわるようにしています。来月の頭には北海道に行く予定ですよ。

 

――お話から、従業員の方との仲の良さが伝わってきます。

うちの会社は比較的自由な雰囲気がありますね。そのおかげか、社員の出戻りが多いんですよ。たとえば本部のパートの方で、お子さんが大きくなってから物流部門で復帰する、ということもありました。雰囲気が自由で裁量も任せている環境があるからか、戻ってきたくなるのかもしれません。

 

ーーパティズさんの今後の展望についてお聞かせください。

4つの主要なテーマがありまして、店づくり、ものづくり、システム、そして人材です。

まず店作りに関しましては、幅広いパターンを考えられるようにしています。たとえば、最近はショッピングセンターの空き店舗も多くなってきたので、面積を広めに取ってチェーン店とのコラボもしてみました。

次にものづくりですが、商品のオリジナル化を進めています。これはジャパンクリエーション社も共同で取り組んでおりまして、利益率を上げていくのがひとつのテーマになっています。

続いてシステム面ですが、これは商品の管理上、なくてはならないものなので重要です。毎年新しいシステムが登場していて、将来的には買い物カゴごと自動清算するようなシステムが主流になると考えています。こういったシステムの導入も検討する必要があります。

最後に人材です。時代の変化とともに会社としての重要度は高まっているので、教育と採用については最善を尽くします。うちの会社はある程度、個人に裁量がある分、仕事のやりがいが感じられる環境なのですが、これは採用活動でも入社後の社員教育でも非常に良い影響があるでしょう。特に販売職は、好きな商品に囲まれて働きながら、自分が気に入ったものを仕入れできるチャンスがあるので魅力だらけだと思っています。組織的にも年功序列ではないので、実力があれば昇進できる可能性が高い。こうした組織づくりは、今後も大切にしたいと考えています。

 

ーー最後にこの記事を読まれる方にメッセージをお願いします。

ファンシーショップでの仕事は、とてもやりがいのある仕事だと思っております。夢を追いかける仕事でもありますから、その夢を共有できる方はぜひ入っていただけると嬉しいですね。スタッフ全員に共通していることは「一生懸命さを持っている」ことです。そんなスタッフたちと、ぜひ一緒に働いてみたいということであれば、気軽に問い合わせてほしいですね。

 

株式会社パティズについて

・ホームページ:https://www.pattys.jp/

 

この記事をシェアしよう!

  • hatena