テリーナテリーナの理念を紐解く――大切な人と一分一秒でも一緒にいること。それが生活の質を向上させる全て
written by ダシマス編集部
突然ですが、福島県郡山市には初見では何をしているか理解できない謎の企業があるのをご存じでしょうか。
それは“QOL*をなんとかする、どうにかする”を企業理念に掲げ、PR(Public Relations)✕DX✕健康という、一見すると関連性が全くないように見える3つの事業を主に展開する株式会社テリーナテリーナ(以下:テリーナ)です。
そこで今回はテリーナの代表取締役CEOである佐藤 成俊(さとう なるとし)さんに直撃インタビューを実施。これら3つの事業とQOLはどう繋がるのか、「QOLをなんとかする、どうにかする」に込められたその本当の想いの真相についてお伺いしました。
今まで外に語られなかった代表取締役の想い。本記事にて余すことなくお届けします。
*QOL=Quality of life(クオリティ・オブ・ライフ)の略。生活の質、生命の質を表し、どれだけ人間らしく、そして自分らしい生活を送り幸福を感じて生きていられるかということをとらえる概念。元は健康関連の概念だったが、1970年以降、広く注目されるようになった。
佐藤 成俊(さとう なるとし)さん
1974年生まれ。高校卒業後、18歳で白血病を患い闘病生活を強いられ就職ができずフリーターとして社会人デビュー。人並み以上のパソコンスキルを武器に数社を渡り歩く。フリーター時代に出会った、ある会社の社長に影響を受け起業することを決意。2007年にリサイクル店の防犯設備や事務機器、内装備品販売の会社を設立する。その後2011年に代表の座を退き、2012年に先代の急逝により先代が設立した『株式会社福よし』の代表取締役に就任。2021年10月に社名を『株式会社テリーナテリーナ』に変更し現在に至る。
取材・執筆:大久保 崇
『ダシマス』ディレクター。2020年10月フリーランスのライターとして独立。2023年1月に法人化し合同会社たかしおを設立。“社会を変えうる事業を加速させ、世の中に貢献する”をミッションとし、採用広報やサービス導入事例など、企業の記事コンテンツの制作を支援する。猫ファーストな人生。歩くこと、食べることが好き。
最初はホームページを作成しSEOを強みとしたWeb事業の会社だった
――今日はよろしくお願いします。まず代表になられた経緯を教えてください。
2012年12月28日にうちの父が急逝したので代表を引き継ぎました。この会社は私のために父が2011年に設立したものなんです。設立当初は福よしという名前でした。
2011年といえば3月に発生した東日本大震災の影響を受け、我が家が全壊してしまった年です。当時、私は自分で立ち上げた会社でリサイクル関係の仕事をしており、全国を飛び回っていました。仕事そのものもかなりのハードワークだったのと、震災の影響によって受けたショックもあって体調は限界を迎えていました。
そんな私の状況を見て、父が私の受け皿として作ってくれた会社が福よしだったんです。
――当時は簡単には言い表せない苦労があったかと思います。今の主要な3事業が立ち上がった背景など伺いたいのですが、まず引き継いでから、どのような活動を始めたのでしょうか。
取締役のメンバーにグラフィック関係の仕事の経験があった者がいたこともあり、ホームページ制作の事業に力を入れました。その際に何を強みにするか考えた結果、まずはSEOを頑張ってみようと決めたんです。
――最初はホームページ制作やSEOから始められたというのは意外でした。
私が防犯設備士の資格を持っていたので、まず防犯用のホームページに特化しようと決めたんです。そしてあっという間に郡山エリアで検索一位を取ることに成功し、順調にホームページの受注を重ねSEOを武器に成果を積み重ねてきました。
嘘のような本当の話なのですが、中には上位表示してあまりに問い合わせが増えたせいでクレームをもらったこともあったくらいです。「そんなに集めても対応できない」、「ホームページから電話番号を消せ」など色々ありました(笑)。
ただ、この時に受けたクレームをきっかけに、SEOだけでなくマーケティング全般をサポートする会社にならないといけないと思ったんです。集客してからの対応や、継続的に売上を上げる仕組み作りまで、できるようになろうと。そして実際にメールの対応方法から全て私たちがコントロールして、お客様の売り上げも作れるようになっていきましたね。これが今の主力事業の一つである、PR事業の原点でもあります。
当たり前の中に隠れる魅力を伝えるのがテリーナ流のPR
――ちなみに健康など、他の事業はどのような経緯で始められたのでしょうか。
SEOからマーケティングへと繋がる事業基盤が出来てきたのですが、既にWeb関係の仕事の可能性はある程度見えてきました。だから今後のためにも、何か新しい事業を始めないといけないなと思ったんです。そこで始めたのは訪問マッサージでした。
――なぜそこで訪問マッサージだったのでしょうか。
母がヘルパーの仕事をしていたから、というのがきっかけとしては大きいですね。昔から、いつか健康に携わる事業を始めたいという考えは持っていました。
――なるほど。再度PR事業の話に戻るのですが、その後、どう発展していったのでしょうか。
きっかけは元地元テレビ局の支社長に、とある東京のPR会社に連れて行ってもらったことです。その支社長は、私の仕事ぶりを見て会社の顧問になってくれた人です。
支社長が顧問になった後、自分の友人が経営している東京のPR会社に私を連れて行きました。当時はPR会社が何をしている会社なのかあまり知らなかったのですが、実際に現場を見て内容を知ると、私たちが日頃から仕事でしていることと何ら変わりがないと思ったんです。
そこで私は、その会社がPR事業でどうやって収益化しているのかなどのビジネスモデルを学びました。そのノウハウを取り入れたのが今のPR事業の土台になっています。
――テリーナさんのPR事業の特徴や強みは何でしょうか。
「魅力的だと思われるストーリーをお客様に伝えてちゃんと売る」というのが私のPRスタイルです。
世の中には自分が知らないだけで、自分が本当に求めているものは既に存在しているんですよね。気づいていないだけで、実は身近にあることが多いんです。
例えば私たちが仕事で当たり前にこなしていることでも、お客様から見ればレベルの高いことをしていると思われることがあります。もちろんその逆もありますよ。このように、自分の当たり前が誰かの役に立つことはたくさんあるんですよね。
「商品を売り込みたいけど、どうやってPRすればいいかわからない」という方は、自分達の仕事が日々行う当たり前の行動になりすぎていて、どこに自分達の魅力や強みがあるのかを見落としてしまっています。
そんな本人達が気づいていない“魅力的なストーリー”を、私たちがしっかりと表現して伝える。それがPR事業で大事にしていることです。
――自分にとっては当たり前だと思っていることで、誰かを幸せにできることはありますよね。でも当の本人が一番そのことに気づいていない。
商品そのもの、もしくはその商品を作った人には必ず良いストーリーがあります。にも関わらず、何のために作ったのかをうまく表現できてない人がほとんどです。それをしっかりと伝えたいんですよね。
それに私たちは、いわゆる広告代理店ではないのでメディアなど媒体から収益を得ていません。だから純粋にお客様のためを考えてPRできることが強みだと思っています。お客様の良いところをアピールすることに専念できるので、私たちとしても本気で頑張れるんですよね。
――お客様のためになることを追求する。それを大事にされているんですね。
そうですね。理念として掲げている「QOLを何とかする、どうにかする」というのも、まずはお客様の QOLをなんとかすることが大事ですから。
そして次に大事にしているのは社員のQOLです。お客様のQOLを高めても、社員や自分の家族を犠牲にしているようではダメですからね。
社員は会社に長くいると私に早く帰れって言われます(笑)。もしかすると、「社長はケチで残業代払いたくないだけでは」と思われているかもしれないですが、家族など大事な人と一緒に過ごす時間や遊びに行くための時間を作ってもらいたいんです。
あと会社にお金がないと皆さんの給料に反映できないので、会社のQOLも大事にしています。この3つのQOLが私の中の大事な指標ですね。
しかし、これは「三方良し」的な意味とはまた違うんです。
社員のQOL。家族が大事だから、自分自身の時間が大事だからと言って、これを間違えると、単なる自分中心の人間になってしまいます。まして社員のQOLを上げて、給与をたくさんもらいたいは、違うと思います。
社員のQOLを上げるときには、お客様のQOLと会社のQOLとバランスを取り合うようになると考える。 お客様のQOLを大事にするのは、みんなわかると思うんです。自分達のお給料はお客様から得る利益によって生まれていますから。
社員のQOLを優先すれば、お客様との時間が減りますし、そうなれば売上にも反映します。また、会社のQOLはお金、給与の問題だけではなく、一緒に働く仲間のQOLでもあります。自分が休んでいる時には仲間が支えてくれているんです。
ですから、うちの「QOLを何とかする、どうにかする」は「三方良し」的のようにすべて満足というよりも、お客様のQOL、社員のQOL、会社のQOLは常にバランスを取り合っている。 そこを間違えてもらいたくないですね。
テリーナは大事な人と一分一秒でも一緒に過ごす時間を作るために存在する
――なぜそこまでQOLを重視されているのか教えてください。
私が経験してきた3つの大きな出来事から、本当に大事にすべきことは「生活の質を向上させること」だと気づいたからです。
まず1つ目は父は私に会社を残してくれたのですが、私は親に何も返せないまま父が亡くなってしまったこと。 2つ目は前の会社に残してきた従業員で、27歳の若さで亡くなってしまった人がいたことです。
先ほども話しましたが、私は以前創業した会社で自分の体調よりも仕事を優先して働き続けていました。当時の働き方は、夜の11時まで働いて家に帰り、朝5時には日報が上がってきてその日報をチェック。その後、日報を送った人達とミーティングをして、少し仮眠を取って朝8時に出勤するという毎日だったんです。その上で全国を回り、時には中国やタイにまで行くこともありました。こうした働き方が当たり前だった時代だからとも言えなくはないですが、あの頃の私も「働く」とはこういうことだと疑っていませんでした。
亡くなった彼は、私の秘蔵っ子と言えるくらい大切に育てていた人材でした。彼も私に似て、同じような働き方をしていたのではないかと思います。その彼が27歳の若さで亡くなった時に、「もうこんな働き方を繰り返してはダメだ」と思ったんです。
世の中には1日3時間で自分たちよりもお金を稼ぐ人もいます。何時間働いても稼ぎが変わらずに死んでしまうくらいなら、3時間で稼げる人になろうと。短い時間でも成果を上げることに力を注ごうと決めたんです。
そして、もし当時にこうした考え方で仕事をしていれば、父と過ごす時間も増えていたし、今よりかは何か恩返しができていたと思っています。
そして3つ目は愛犬のテリーナですね。
――社名は愛犬のお名前が関係しているのでしょうか。
そうです。2021年まで約9年間一緒にいました。私の帰りをいつも待ってくれている存在で、一緒にいた時は本当にテリーナが私の全てでした。もちろん私一人ではなく社員の協力もあってできたことですが、この子と過ごす時間が作れたことは私にとって非常に大きかったんですよね。
だから私は大事な人と一緒にいる時間を作ることがもっとも大事だと思っているし、それこそが“生活の質”だと思うんですよ。そのために必要なこと、お金も必要で、働いてその時間を作るということも必要で、ましてやそれは健康でなければ一緒にもいられない。私は生活の質をそこに求めています。
大事な人と一緒に1分でも1秒でも長くいること。自分に関わる全ての人の生活の質を上げるために貢献すること。それがQOLを理念に置いている大きな理由です。
「大事な人と一緒にいる時間を作ることが生活の質を上げる」というのを念頭におき、事業を展開しているのがテリーナという会社です。
プレッシャーは大きい。けれど、その分成し遂げた時の達成感がある職場
――多様な事業を展開されていますが、現在従業員は何名いらっしゃるのでしょうか。
今は15名程ですね。
――社員の皆さんは実際どのように働いておられるのでしょうか。
自分の仕事には自分で責任を持った上で、基本的には自由に働いてもらっています。
私の考えですが、社長も社員も、業務を行うという点においてはみんな同じ権利を持っていると考えています。だからテリーナには「こうしたい、あれがしたい」という考えを、比較的全員が自由に言える雰囲気があるんです。
極端な話「今日一日休んでもいいですか?」と聞かれたら、基本的に「どうぞ」と言います。お客様に迷惑をかけず、仕事も順調に進んでいるのなら、休める時にどんどん休んで生活の質を上げてほしいので。
――社員の皆さんにも、QOLを大事にするという考え方が浸透していますか。
そう思っています。それが一番大事ですから。
実は先日「仕事が楽しいと思ったことはない」と話す社長さんに出会ったんですよ。そのことを聞いて純粋にショックでしたね。それで「もう楽しくないんだったら、その仕事はやめた方がいいです」ってきつい言い方かもしれないけれど、はっきり言いました。
そんなことがあったので今朝、社内で一番伸びているDX部門のメンバー達に「仕事は楽しいか?」と聞いたら、「大変だし苦労はするけど楽しいです」、「今はプレッシャーも大きいけど楽しい、成し遂げた時の充実感がある」って言うんです。本当に頼りになります。
その時にも思ったのですが、楽しい仕事=責任がある仕事なんですよね。「自由にやる」というのは聞こえはいいですが、すべての仕事には責任が伴います。自由にするなら、その責任は自分で背負えるかということです。
でもその責任を自分一人だけで持つ必要はありません。ここは会社ですから、仲間と一緒に試行錯誤しながら取り組んでいくのが大事なんですね。全部一人でするのなら個人商店でやればいいんです。
それができる場所を作るのが私の仕事ですね。
――社内には若い人が多いのでしょうか。
幅広いですよ。65~70歳ぐらいの人で皆を引っ張ってくれる人もいます。一番若い人が26歳で30代前半も増えてきています。
――社員さんとコミュニケーションをする時に何か意識していることはありますか。
あまり否定しないことと、怒る時はみんなの前で怒らないようにしています。
昔は人前で怒ったら悔しいと思って頑張るだろうと思って怒ったこともあるのですが、今はもう頑張るどころか、落ち込んで立ち直れなくなってしまうのでしません。
――ちなみに佐藤さんが仕事上で怒るのはどんな時ですか。
自分のことが中心になっている時です。仕事を自分の都合だけで進めた結果、誰かに迷惑をかけている時は注意します。
特に厳しくするのは、何か失敗した時に「お客様が悪いことを言い訳にする」ことです。先ほども言ったように、自分達のお給料はお客様から得る利益によって生まれています。だからお客様を大事にすることは当然ですので、お客様のせいにするのは違うと思うんです。
ただ、私はお客様は決して神様ではないとも言います。正当な理由があるのなら、きちんと説明すべきですし、ここを混同してしまうのはよくありません。
だからお客様とのコミュニケーションは本当に大事です。私が良いコミュニケーションだと思っているのは「その人にまた会いたいと思えるか」です。相手がまた会いたいと思っていないのなら、それは良いコミュニケーションができているとは言えません。お客様との関係性の作り方については、日々、社員とよく話しますね。
“出会い”が人生を良い方向へ導くターニングポイント
――最後にこの記事を読んでいる方に向けて一言お願いします。
私は何を仕事にするかより誰と仕事をするかを重要視していて、「出会い」が人生を良い方向に向かわせてくれると考えています。
これまでの経験から思うことですが、目の前で起こることはたとえそれが突然の別れであっても、全て自分を幸せにするために起きているということです。色んな職場、色んな人に出会って、自分の人生を良い方向へ向かわせてほしいですね。
あともう一つ、成功する人間は成功することしか考えていません。
行動力があって本当に考える人であれば、あとはもう場所を選ぶだけです。何となく働き場所を選ぶのではなく、どこを目指したいのかを自分なりに考えてほしいなと。
テリーナも事業が成長していくにつれて人も必要です。今の会社の成長を考えると、直に50人ぐらいの組織にはなると思っています。出会いを大切にし、たとえ荒削りでも自分なりに考えて何者かになろうとしている人がテリーナに来てくれたら嬉しいですね。
テリーナテリーナについて
・ホームページ:https://tereena.jp/
・採用情報:https://hr-hacker.com/tereena-tereena