業界のパイオニアとなったゆうき総業。20歳で独立した結城社長の創業エピソードと今後の展望を聞いた

レッド

written by ダシマス編集部

山形県上山市に本社を構え、山形と福島を中心に塗装工事や防水左官など多能工体制で地域に貢献するゆうき総業株式会社(以下:ゆうき総業)。代表取締役社長の結城伸太郎(ゆうきしんたろう)さんが20歳の頃に刷毛(はけ)一本で独立し、その後30歳で法人化して生まれた会社は2023年で創業23年を迎えました。

今回は代表の結城さんに、独立・創業時のエピソードや今後の会社の展望について取材。成長を続けてきた会社は転換点を迎え、“継承”のフェーズに入ったと話す結城さん。若手が成長できるために設けた、自社独自の評価制度についても話していただきました。

代表取締役社長 結城 伸太郎(ゆうき しんたろう)さん

代表取締役社長 結城 伸太郎(ゆうき しんたろう)さん

1980年8月生まれ。神奈川県川崎市出身。中学時代から土木工事のアルバイトを経て建設業界へ。高校には行かずそのまま土木会社へ就職。厳しい親方の下で数年を過ごし、足場、ブロック屋、塗装工など建設関係の仕事を転々とし20歳に塗装業で独立。30歳で法人化し現在設立23年。2008年に塗魂ペインターズというボランティア団体を立ち上げ現在副会長を務める。日本各地に塗装業仲間がおり様々な施設のボランティア塗装を施工し、その数150か所を超える。ボランティア団体としてシチズンオブザイヤー、社会貢献支援財団からも受賞を受けた。現在は一般社団法人日本多能工協会の会長を務め、若手建設工事職人の増員、業界活性化に力を注ぐ。

取材・執筆:大久保 崇

取材・執筆:大久保 崇

『ダシマス』ディレクター。2020年10月フリーランスのライターとして独立。2023年1月に法人化し合同会社たかしおを設立。“社会を変えうる事業を加速させ、世の中に貢献する”をミッションとし、採用広報やサービス導入事例など、企業の記事コンテンツの制作を支援する。猫ファーストな人生。歩くこと、食べることが好き。

中学時代の憧れが創業の原点。独立して一層のめり込む

 

――まずこれまでのご経歴や、どんな人生を歩んでこられたのか教えてください。

実家は、祖父の代から小さな食料品店をしていました。両親は店を継いだのですが、私はそこには興味がなくて。中学2年、3年の頃から、夏休みと冬休みに土木関係のアルバイトをしてお金を稼いでいました。高校に入学したものの、学校がつまらなくて3ヶ月くらいで退学して、そのままアルバイトで働いていた土木会社に16歳で入社します。

 

――この業界で働こうと思ったのはなぜだったのでしょうか。

学歴がないと勝負できるのは体力くらいだと思っていたからです。

あと今になると恥ずかしい話ですが、自分も10代の頃は暴走族を見てかっこいいなと憧れる時期があって。暴走族=とび職みたいなイメージがあり、それでニッカポッカをはくのに憧れたというのも大きかったかもしれません。それでどうしても土木関係で働いてみたくて、中2の時に父親に頼んで、知り合いの土建屋さんを紹介してもらいアルバイトに行くようになったのが始まりです。

実際に働いてみると、外で働くのが想像以上に楽しくて。かなり厳しい会社でしたが、お日様の下で働くのがとにかく気持ち良くて「自分はこの仕事で稼ぎたい」と強く思うようになりました。土木、足場、塗装。いろんなことを経験させてもらいましたね。

 

――独立された理由は何だったのでしょうか。

20歳で子どもが産まれ結婚しました。塗装で独立したのは丁度その頃です。「結婚して子どももいるのに、不安定な独立を選ぶの?」と思われるかもしれませんが、当時の師匠から、「お前は独立したほうがいい」と半ば強制的に独立させられたような感じになったのが独立のきっかけですね。

ただ、独立を決断して良かったと思っています。独立してからこの仕事に本気でのめり込むようになったし、本当にやりがいを感じて仕事が楽しくなり、かなり勉強もしました。

20歳で独立しているので、同じ塗装業界では当然下っ端です。だからといって負けたくないし、朝から晩まで勉強しまくって。専門知識だけでなく、ホームページのつくり方なんかも学んで自分でホームページもつくりました。

 

ネット上で生まれたつながりが会社成長の土台になった

 

――今と違って、昔はホームページをつくるのも難しかったと思います。すごいですね。

恐らく当時、山形県の塗装会社でホームページを持っていたのは私が初めてだったと思います。それからはネット上でよく情報発信をするようになりました。それが23歳の頃ですね。

ブログで発信したり、小規模ですが塗装業者が集まる掲示板のようなものつくったり。ネットを通じて、他県の塗装屋さんと交流する機会が多くなりました。オフ会なんかも開催しましたよ。

県内でのつながりはあまりなかったのですが、県外のつながりが増えて、そのおかげで様々な情報が得られました。山形よりも東京など都会の方が得られる知見や情報が多く、地元では学べないことを吸収できました。

 

――そもそも、ホームページやブログで発信しようと思ったのはなぜだったのでしょうか。

父親のパソコンを借りて、ネット上で塗装屋さんを検索してみたことがあったんです。そしたら10社くらいホームページがでてきて、それにすごく魅了されてしまって。もうじっとしていられなくなり、気になった会社さんにすぐにメールを送りました。「こんなホームページを私もつくりたいです」って。

そんな風にあちこちにメールをしていると、中には向こうから電話をかけてきてくれて仲良くなることもありました。いろんな人から「(ホームページを)自分で立ち上げなよ」という後押しもあって、自分でHTMLを覚えて立ち上げたのが始まりですね。

 

――その方々とは今も交流を。

もちろん。横浜と東京の方です。こうした出会いがあったからこそ、会社を成長させることができたと思っています。

 

――ブログを拝見したのですが、日常が垣間見えるのがとてもいいなと思いました。こうした発信から仕事の相談がきたり、ここで働きたいといった声がきたりなど影響はありますか。

そうですね。ブログを発信していることで同業者からメールがくることも増えました。あと最近だとインスタを見て、「左官をやりたいです」と門をたたいてくる若い子もいたので、いい影響はあると感じています。

 

結城社長のブログ

山形で奮闘する社長の報告書

ゆうき総業Instagram

ゆうき総業株式会社 (@yuuki.sougyou) • Instagram photos and videos

 

今は“継承’”するフェーズ。若手が成長できる会社にしていく

 

――今後、ゆうき総業をどんな会社にしたいと考えていますか。

ゆうき総業は、塗装工事や防水左官なども対応できる多能工体制の企業としてパイオニアになっていると自負しています。なので、この多能工という分野で成長を続け、日本一を取りたいですね。年商何億とかになっても営業会社にはならず、ずっと“工事店”でありたいとも思っています。あくまでも工事店という形で天下を取りたいんですよね。

それと、若い子をどんどん成長させられる会社にしたいです。

私は20歳で独立しているので、他の人から見ると「成功している」と言われることは少なくありません。中には私の影響を受けて、独立することに憧れている若い子もいます。こうしたきっかけは無駄にしたくないので、20代の若手に教えられることはたくさん教えたいと思っています。

創業して23年になるのですが、これまでに失敗してきたことはたくさんあります。そんな失敗を同じように体験させるよりも、私が教えることで乗り越えられるようなってほしいんです。

今、この会社は「継承するフェーズ」に入っています。今一番若いのが19歳の子なのですが、その子は茨城県の同業者の息子です。ゆうき総業で修行させてくれと頼まれました。こうした相談は時々あって、皆ゆうき総業で技術を学びたいと思ってくれています。ゆうき総業自体が若手の訓練校というか、今はそういう段階に入ってきている気がしています。

 

――ゆうき総業で学べば技術が身につくという信頼にもなっていそうですね。

そうなってきていると感じています。だから受け入れ体制も整えていくつもりです。

 

――具体的に取り組まれていることを教えてください。

工事部の中にゲームの要素を取り入れたスキル評価制度を取り入れています。遊びの要素も取り入れつつ、明確な羅針盤をつくったんです。

RPGのゲームだと、レベルが上がってステータスが上がりますよね。レベルが上がると魔法という特別なスキルを覚えることもあります。こうしたゲームの要素を、そのまま工事部のスキル評価制度に取り入れました。「ここまでのレベルにならないと、この資格は与えられない」という段階的な評価制度です。

 

――ゲーム要素を取り入れた独自の評価制度。とても面白そうですね。

若い子たちと一緒に仕事をするには、遊びの要素を取り入れるのが一番ですね。ランクが今180の人は賞与もランク180の賞与ということになります。「このランクになったらこの資格に挑戦できる権利が与えられる」という、フローチャートをしっかりつくりました。

そしてランクが上がっていくと「独立」と「幹部」という2つの分かれ道があって、独立の道に進めば会社を卒業できます。丁度、今年2023年の4月1日に第一期生が卒業しました。

彼はゆうき総業に16年勤めた人間ですが、退職という意味ではなく卒業という名目で会社を去るので、誰もネガティブな気持ちにならなかったんですよね。

若手が独立することをネガティブに捉えず卒業できる人を増やしたり、もしくは幹部になるような人を増やしたりして、若手に機会を与えていくことが大事です。そうした取り組みをしていると、それが人づてに伝わって、また若い子が入ってきてくれると思っています。

 

自分が生きていられるのも社員のおかげ。とにかく皆に感謝

――一緒に働いている社員の皆さんに対して伝えたいことはありますか。

「本当にありがとう」ということですね。感謝しかありません。最近、特になのですが、40歳すぎてから肉を食べるたびに「肉を食わしてくれてありがとう」とか思うようになって(笑)。

あと社員に対してだけでなく、肉になってくれた牛に感謝、生き物に感謝、自然の摂理に感謝という感じの想いもあって、自分の周りにあるもの全てに「ありがとう」という気持ちを抱くようになりました。

自分が生きていられるのも社員のおかげ。ことあるごとに感謝ばかりしています。若い子たちにも、あーだこーだとうるさいことを言いながらも、感謝していることの方が多くて、怒りというものを感じたことが最近は一切無いですね。

 

――年齢差があるとコミュニケーションも難しいと感じられる方もいらっしゃいますが、何か気をつけていることはありますか。

なるべく年配の方から自然に情報を吸収して、若い人に伝えるということですね。

この業界には60代70代で現役の職人として働いてくれている人がたくさんいます。その人たちは今の20代とのジェネレーションギャップを感じて、なかなか技術の継承ができずに悩んでいるケースも少なくありません。

私は今43歳なのですが、私たちのような40代の人間は70歳の人ともジェネレーションギャップなく、素直に会話できる年代です。なおかつ、20代に対しても普通に付き合える年代である中間のポストでもある。どの世代にもジェネレーションギャップを一番感じない年代だと思うので、コミュニケーションの潤滑油になるように心がけています。

 

――ありがとうございました。これからは若手に継承していくフェーズということですが、今のゆうき総業で活躍できるのはどんな人でしょうか。

どういう人でも受け入れたいというのが本音ですが、あえていうのなら「自分の仕事を見つけられる人」だと思います。ゆうき総業は自由主義なスタイルなので、自分で仕事を見つけられるくらいの人が働きやすい環境だからです。

社内で力をめきめき発揮している人は、みな総じて、自分で仕事が見つけられる人です。この会社で発揮するのはそういう人なのだろうと思います。

 

ゆうき総業について

・ホームページ:https://yuukisougyou.com/

・採用情報:https://hr-hacker.com/yuukisougyou/job-offers

 

 

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